震えて眠れ

日本人の義務である勤労をしていない怠惰なわたくしは、今日も惰眠をむさぼってしまった。世間の皆様、誠に申し訳ございません。起きたら、世の中の方々がお昼ご飯を食べ終わってるかな?くらいの時間でありました。最近こんな日々が続いていて、夜の寝つきがすこぶる悪い。寝ようとすればするほど頭はさえるので、スマホでどうだっていい記事を読みながら、寝ようが寝れまいがどうだっていいや、なんてやけくそな気持ちになってきて、気が付くと瞼が閉じている。

 

「うたちゃんだって結婚したら一日中寝てるわけにはいかないよ」と20年来の親友にいわれたのは少し前のこと。残念ながら結婚はしていないけれど、うっかりパートナーが出来たので、半同棲みたいなことをしている。お互いの家はちゃんとあって、都合があったり、ひとりになりたくなったりしたら自分の家に戻る。よくいえばおいしいところ総取り、悪く言えば結婚のままごと。

 

結婚のままごとを始めてから、生活が見事に変わった。パートナーが朝早いので、どれだけ眠くても朝の5時には一度起きる。そして朝の支度を見守る。朝ごはんは別に作らない。食べたければ自分でねスタイルなのである。前はもうちょっと早起きしてパートナーの昼食にデカめのおにぎりを4つ握っていたが、わたしの負担になったのでやめた。職場で弁当が出ていると言うし、デカめのおにぎり4つというコメの消費量を考えるとそんなに食費を抑えられている気もいない。弁当を買って社会の経済を回してくれ。ぐるんぐるん。

 

見送ったあと、わたしは朝ごはんを食べて眠る。生まれてこのかたずっと眠いのだ。眠ることが生きがいなのかもしれない。食事をしたあとに寝る背徳感、あなたも味わったことあるでしょう。きっと起きたら朝ごはん消化できなくて、胃がむかむかしてるんだろうな~、でも眠いわ、寝る、おやすみ。それが午前7時くらい。

 

しまった。やってしまった。午前10時、スマホが鳴って一度目が覚める。パートナーからである。仕事の休み時間に彼はほぼほぼ連絡をくれる。返事をしなくては、眠っていたことがばれてしまう。いや、ばれてもいいんだけど普通に連絡取りたい。乙女心と睡眠欲。最近は睡眠欲が勝つことが多い。起きれない。なんか胃ももたれてるし。朝食の目玉焼きの油が…おやすみなさい。

 

ところがどっこい、乙女心が勝つこともある。要するに午前10時起床。それでも世間一般から見たら相当遅い。もうちょっと眠れるけれど、連絡で起こしてもらえたし、家事やらなんやら、やらなきゃいけないことでも片付けるか、とコーヒーで朝のブーストをかける。

 

わたしたちの関係は、結婚でも同棲でもない。そして別に養ってもらっているわけでもない。食費も、光熱費も、割り勘。だからこそ家事はわたしの義務ではない。ただの善意だ。いつもマメに連絡くれてありがとう(皿を洗う)。体調を心配してくれてありがとう(コインランドリーに行く)。一緒にいてくれてありがとう(買い出しに行って料理する)。

こう見えてわたしはからだが弱いので、家事がどれもできなくなることがある。それでも責められることはない。なぜなら家事が義務ではないから。さすがに何もしない日が一週間二週間続くなら、自宅でぐうたらしているほうがお互い気楽でいいのでさっさと帰り支度をして自宅に戻る。マイホームでは料理なんてするわけもなく、カップ麺と卵かけご飯と納豆かけご飯が主食になる。そしてだれに気兼ねすることもなく眠る。ひたすら。

 

ひとりだと、どうでもよくなることがたくさんある。洗濯物なんてたまってたって困らないし、食事だって栄養バランスなんかどうだっていい。だからいくらでも眠っていられる。ただし全然生活が楽しくない。メリハリとかそういうのじゃなくて、死んでは生き返って死んでは生き返っての繰り返しのようで少し怖い。眠ることは死ぬことの疑似体験だ、だから大好きだけれどちょっとだけ不安になる。

 

「ずっと寝ていられなくなる」ことはカラダに来る。メンタルにも来る。結婚のおままごとでさえつらいことがある。もう若くはないから、正直キツイと思うことは増えた。それでもずっと眠っている生活より、誰かと一緒にいる生活を選んだ。死んでいる時間より、生きている時間を大切にしたいと思えるようになったから。ひとりよりふたりのほうが、楽しいと感じる瞬間がたくさんあることに気づいたから。当たり前のことなのに忘れてしまっていたこの感覚は、ひとりでいることに慣れすぎていたせいなのだろう。

 

しかしながら、ちょっぴり怖くても、死んでいるように思えても、やっぱり眠ることが好きなので、今日も罪悪感でいっぱいになりながら眠る。社会の歯車から外れたアウトローは今日も震えながら目を瞑るのです。ただいまお昼の2時。おやすみなさい。